義母と暮らすようになって、私は気づき始めました。
認知症の人と私たち家族の間には、“ズレ”があって——
そのズレこそが、戸惑いやイライラの原因なのかもしれない、と。
そんな時、従姉妹で介護施設に勤める林檎ちゃんが、こんな話をしてくれました。
ある日、利用者さんのおばあちゃんが突然、髪を引っ張ってきて——
「アタタタ・・・・」
「もう、あの人のところ行きたくない」と思いながらも、その日の仕事を終えようとしたら、
そのおばあちゃんが笑顔で手を振ってくれたんだそうです。
向こうから、「もう、帰り?ご苦労様」と笑顔で手を振るおばあちゃん。

そういうとこ、やっぱり可愛いなって思っちゃうの
……介護って、“この揺れ”の繰り返しなのかもしれません。
だから私は、義母のことを少しでも理解したくて、認知症家族の会に参加してみることにしました。
そして、家族の会で教えてもらった「オレンジサポーター養成講座」にも参加し、認知症について、もっと正しく知りたいと思っています。
最後まで読んでもらえたら、うれしいです。
※この記事は、筆者が認知症の家族と暮らす日々の体験をもとにしたものです。専門的な治療や判断は医師や専門機関にご相談ください。
認知症家族会に参加してみました。
義母(ばあちゃん)と一緒に暮らす様になって、戸惑うことばかり、
最初から、「私はボケてない。お前らがボケ扱いするから、ボケになるんや」
さっきまで話していた姉の事を、まるで、居なかった様に
「ゆり子にトメ子の家に来ること、言わずに出てきた」
私は頭の中で「え?さっきまで一緒にいたやん…」と混乱しながらも、それを言い返すこともできず、ただただ飲み込むしかありませんでした。
認知症の義母の戸惑い
義姉の家から、6時間かけて公共交通機関を使い、やっとの思いで帰ってきました。
玄関を入って、荷物を置いた、そのほんの数秒後。
ばあちゃんは、それまでの道中や話していたことを――まるごと忘れてしまったみたいでした。
そして、いきなり叫んだのです。

なんで、私、こんなとこまで来たんや。早く帰らないとゆりえに叱られる
私は、毎日“わからない”と暮らしている
そこからの1週間は、あまり覚えていません。
目を離したほんの数分で、ばあちゃんは家の外に出て、「ゆりえ、来てませんか?」と、マンション中のインターホンを押しまくっていました。
そして、しまいには――

お前らがゆりえを追い出したやろーーー
もう、何がなんだか、さっぱりわかりません。
そんなある日、駅の掲示板に貼られていた一枚のチラシが目に留まりました。
「認知症家族会、参加者募集」

その時の私は、チラシを見た瞬間に思ったんです。
「もしかしたら、ここに行けば、“わからない”のヒントがあるかもしれない」と。
🟢参考リンク:
社会福祉法人 明石市社会福祉協議会
👉 認知症家族会と認知症カフェ(令和7年度版(2025年度版))
※地域の福祉情報や家族会、介護者向け講座の案内が掲載されています。
そんな私が参加した、“オレンジの学び”
私が参加した「オレンジサポーター養成講座」は、国家資格でもなければ、専門職向けの研修でもありませんでした。
でも、受けてみて思ったんです。
これは、“制度”で動いてるんじゃなくて、“思い”で広がっている活動だって。
「オレンジサポーターは、草の根運動のようなもの。」

地域で認知症の方やその家族を、みんなで支えていこうという小さな一歩。
そのために、講座では、認知症の基礎知識や接し方、声のかけ方など、すぐにでも役立つ話を聞くことができました。
これは“資格”じゃなく、“思いやり”をつなぐバトン
講座で配られたパンフレットには、認知症の方が描いた、とてもやさしいタッチのイラストがありました。

それを見ただけで、ちょっと心がやわらいで、「ここは、私の話をしても大丈夫な場所かもしれない」と思えました。
講習を受けた人には、オレンジ色のバッジが配られます。
実はこのバッジ、ただの記念品じゃないんです。
オレンジのバッチが認知症家族を救いました
講習を受けた人には、オレンジ色のバッジが配られます。

今回の講習で、こんな話を聞きました。
ご夫婦で買い物中、旦那さんが突然「トイレに行きたい」と言ったそうです。
旦那さんは若年性認知症。奥さんは女子トイレに入ることができず、困り果てていたとき、
偶然その場にいた「オレンジのバッチをつけた人」が声をかけてくれて、
一緒に男子トイレへ付き添ってくださった――。
ほんの数分のことかもしれません。
でも、その数分が家族にとっては“救い”だったんです。
私はこの話を聞いて、胸があつくなりました。
「バッチがあるから助けた」んじゃなくて、“助けてもいい”と安心して動けるサインになっていたんだと思います。
オレンジの学びを、誰かにそっと手渡したい
「バッチがあるから助けた」んじゃない。
“助けてもいい”って、安心して動けるサインになってたんだと思います。
誰かが困ってるとき、声をかけるって、簡単なようで難しい。
でも「学んでいる」というだけで、行動のハードルが、ぐっと下がるんです。
ばあちゃんは、3分前を忘れちゃう。だけど、本人は

忘れてない!
ばあちゃんの“現実”と、私たちの“現実”は、ほんの少しズレている。
でもそのズレにイライラするよりも、「そうなんやな」と、寄り添えるようになるだけで―
介護って、ずいぶん変わるんです。

私がオレンジ育成講座で学んだことは、
そのズレに気づく“まなざし”を育てるものだったと思っています。
だからこそ、この記事を読んでくれた誰かが、少しでもこの学びにふれてくれたら――
今、ひとりで介護を抱えている人の重しを、ほんの少しだけでも、外してあげられたら….。」
それが、回り回って――
いつかあなたが介護する人になった時、きっと誰かが、今度はあなたを助けてくれるって。
私は、信じています。
結び
「助け合い」って、大げさなことじゃなくて、そっと学んだ人が、そっと誰かに手渡すものなんです。
いま、全国でこういった「認知症サポーターキャラバン」の取り組みが行われています。
オレンジのバッジは、ただの飾りじゃありません。
“気づいて、動ける人”がいるサインなんです。
▼参考リンク:
🟠 厚生労働省|認知症サポーターについて
※地域で開催されている「認知症サポーター養成講座」や活動内容が掲載されています。
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