前回のインタビューで、親の認知症に気づくタイミングは、人それぞれで、その対応も様々だということがわかりました。
トメ子さんのお義母様も、忘れてしまう中、家族を思ってる姿に「認知症になったからと言って何もわからなくなるわけじゃない」ということがよくわかりました。
「介護は突然ですが、家族で普段から介護について話し合っておけばよかった」と、トメ子さんは続けます。
今回は、お義母様と新幹線に乗っての600kmの移動で気をつけてた点と、一緒にいる家族のそれぞれの想いをお伝えします。
認知症の義母を連れて、家族で挑んだ600kmの移動
前回の記事で、ディズニーに遊びに行ったついでに寄ったご主人様の実家で、いきなり、認知症のお義母様を預かることになった所まで話してくれたトメ子さん。
ですが、
「勢いだけで認知症のお義母さんを連れて来てしまって、色々問題もありました」と続けます。
初めて、認知症の義母と一緒に乗った新幹線

そんなに急だったら、いろいろ困ったことがあったと思いますが?

はい、まず公共交通機関での移動は、お義母さんが、どこまで覚えてるのか、わからなかったので、一人にすることができません。
アイスコーヒーを一口飲んで、続けます。

ただでさえ、人の行き来が多い場所に 、お義母さんを一人で待たせることが出来ないので、常に主人と息子でガードしながら、慎重に移動しました。
朝から、姉二人と一緒に近くの病院に行っていたお義母さんが帰ってきました。
帰ってきたお義母さんが、まっすぐ私の目を見ながらどこか寂しげな笑みを浮かべて、「トメちゃん、これから頼むわね」と言いました。
私が、義姉のゆりえに、「何か、気をつける点があれば教えてください」と言うと
「薬は、寝る前に。
忘れて、何度も飲んじゃうから注意して….. 」
と、それだけ。
ゆりえは言葉少なめに
「ばあちゃんは、なんでも食べるし、トイレも自分でできるから」
…なんか、不安だな。
義母「ゆりえ、着替えは入れてくれたんか」
ゆりえ「ここに下着とか、全部入ってるから。
あとは、宅急便で送るから大丈夫だよ」
追い出されるように、ゆりえの家を出発しました。
最寄りの駅で、長女のゆり子と別れることに。
ゆり子「ばあちゃん、体に気をつけて。私も、またひろみの家に行くから」
義母「これで、今生のお別れになるかもしれないね…..(涙)」
その言葉に、空気が少し止まりました。
トメ子「そんな訳、ないでしょう」(笑)(涙)
ゆり子は笑いながらも、目の奥が少し潤んでいました。
そうして別れ、ホームに上がって しばらくして義母がポツリとつぶやきます。
「ゆり子に、何も言わずに出て来てしまった。」
えっ…..。
振り返ると、主人と息子が自販機の前で「何を買う?」とか話しながら、二人は義母の言葉に気づいていません。
東京駅に着くと人はホームであふれかえっていて、緊張が走りました。
主人と息子は、相変わらず「どこで昼飯食う?」とか話しています。
主人「新幹線に乗る前に弁当でも買うか?どこで、売ってるんや」
。。。何を呑気なこと言ってるんや、こいつは(ため息)
トメ子「とりあえず、お義母さんとトイレに行ってくるから、買ってきて」
そうして、お義母さんの手を取り、トイレに
義母「トメちゃんが行くんだったら、私も行くよ」
トメ子「はい、はい。一緒に行きましょう」
義母の手を取り、階段を降りていきます。

同じ家族であっても温度差がありますね。
慣れない土地で、多くの人達の間を認知症のお義母様を連れての移動大変だったと思います
編集者「特に大変だったのはなんですか?」

主人たちが、認知症は病気だということを頭ではわかってても本質的なことを理解していなかったことです。

それに、なんだかんだ言いながらも、主人も息子も私に頼りきりになってて…..。
一人で背負っている感がありました。
編集者「それは、大変でしたね」
トメ子「はい」
主人・私・お義母さん、3人で並んで食べたお弁当
時間よりも少し早く、新幹線のホームに向かうことにしました。
手には、売店で買った小さなカートを引きながら。
トメ子「このカート1500円したけど、買ってよかったね」
主人も、お義母さんの着替えの入った大きなバックを抱えてたので、これ以上は誰も荷物の持てない状態。
ここまで来たら一安心。
あとは新幹線に乗り込むだけでした。
トメ子の回想….
──ゆりえの家を出る時のこと。
甥っ子の まもるに
トメ子「もし、新幹線のホームで『やっぱり行きたくない』ってなったら困るから、そこまで付き添ってくれない?」
っと聞くと
甥っ子「え….」
驚いた顔で
甥っ子「仕事だからムリ」
トメ子(心の声)『あれ…..。以前、お義母さんが東京駅まで帰ってきたとき、この子たち、進んで迎えにきたよね。』
主人「いいから、バスが来るから行くで」
…..そんなやりとりを思い出していたら、
車窓に富士山が見えてきて主人が弁当を食べ始めた。
トメ子「お義母さん、私たちも食べましょう」
お義母「そうだね。まぁ、美味しそう」

お義母様、比較的落ち着いていたように思いますが、一度も『帰りたい』とはおっしゃらなかったんですね。

そうなんです。そこが不思議で。
少し考えながら——

だけど、ゆりえ姉さんの家を出た時から、今回の施設での暮らしを予想してたんじゃないのかと思ってます

なんだか、しっかりされたお義母様なんですね
「はい、早くに旦那さん亡くして女一人で子供3人育てあげた人ですから。並大抵の苦労じゃなかったと思います」
トメ子さんは、そう言って静かに窓の外を見つめました。
自宅に戻った途端、不穏になる義母
東京駅から西明石の駅まで3時間30分で着きます。
少し、緊張の糸が切れかけて、急に疲れが出てきたトメ子さん家族。
ご主人さんも旅行の疲れが出たみたいで…….
夕暮れの西明石の駅
新幹線を降りて、エレベーターの前には行列ができていました。
焦らなくて良いのに、気持ちはざわついてて…..
トメ子「みんなはエレベーターで降りて。私は階段で降りるから。」
でも、その声は駅のざわめきにかき消されました。
階段を降りて、主人とお義母さんに駆け寄ると
主人「なんで、勝手に動くんや!」(怒る)
隣で、お義母さんが不安そうな顔をしています。
トメ子(心の声)『そんなに怒らんでも…..私も気が張ってるんだし…..。』
駅前のパン屋で、明日の食パンを買って、タクシーに乗り込みました。
相変わらず主人は怒ったまま。
お義母さんは、黙ったまま窓の外を見つめていました。

トメ子さんの緊張感が伝わってきて…..なんとも言えませんね。

はい、この時はとにかく無事に帰り着きたい一心でした。

それで、自宅についてから、お義母様の様子はいかがでしたか?

それが…..ここまでの出来事が、すべて飛んじゃったみたいで。
ついた途端『なんでここに居るのか分からない』という状態になってしまったんです。
補足:認知症の症状「見当識障害」について
時間・場所・人などの“今ここ”が分からなくなる状態を指します。
周囲が変わったり、環境が大きく変化すると一時的に混乱が強まることがあります。
詳しくは『社会医療法人 甲有会』から〜知っておきたい認知症のこと〜』をご参照ください。
「なんで、私はここに居るん?」落ち着かない義母
家につくと、もうあたりは真っ暗。
街灯が、ぽつぽつ灯り始めていた。
主人「お袋、疲れたと思うからお風呂でぬくもって、今日は、ゆっくり休んでくれや。」
義母「…..ねえ、私、どうやってここまで来たんや?」
義母「ゆりえが心配するから、帰らなあかん」
主人「何、言ってるんや!」
トメ子「お義母さん、とりあえず荷物置きましょう」
義母「いや、歩いて帰る」
その後、なんとか なだめて布団に寝かせたものの、服は着替えようとしませんでした。

かなり、お義母様も混乱されてますね

はい。
疲れて、すぐに就寝しましたが、明日からのことを考えるとなかなか寝つけませんでした。
家族それぞれの思いを抱えて、介護のステージへ

今回のお話は、ここまで。
見当識障害に加え、周辺症状も見られたお義母様。
長距離の移動は、きっと大きなストレスだったと思います。
高齢になってからの環境の変化は、想像以上に精神的にも肉体的にも負担がかかるもの 。

次章では、翌朝のお義母様の様子をお伝えします。
どうやってここに来たのか?
なぜこの場所にいるのか?
忘れて、混乱するお義母様に何度も誠実に説明していくことで、本来の自分を取り戻していきますが、夕方には記憶のかけらがこぼれ落ちて…..
また自分がどこに居るのか。なぜ居るのかわからなくなっていく。
お義母様との1日目を、トメ子さんにインタビューしながらリアルにお届けしていきます。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
【介護は自分一人が頑張らなくて良いんです。ここからは、民間の介護をサポートしてくれる会社を紹介します】
介護の始まりは、何も準備のできてないことが多いと思います。
まだ、公的な支援が受けれなくて家族だけでは整えきれない部分もありますよね。
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