前回までのあらすじ——
認知症のお義母様の介護を、ゆりえ姉さんから引き継いだトメ子さん夫婦。
この時、ご主人様はお義母様の症状を軽く見ていましたが、トメ子さんは『これからが本当の始まりになる』という覚悟がすでに固まっていたといいます。
【認知症の義母を連れて、関東から関西へ】では、親の介護と言っても家族の中で温度差がある、そんな現実が見えてきました。
今回は、お義母様との1日目を、朝から晩までトメ子さんが当時を振り返りながら語ってくれました。

まず、目が覚めたお義母様の1日は、「ここはどこ?ゆりえはどこいった?」から始まります。
トメ子さんが、丁寧に説明を重ねるうちに、少しずつ記憶がつながり、穏やかさを取り戻していきます。
しかし、夕方につれ、その記憶のかけらがこぼれ落ちていき、不安から強い言葉を言うようになり…..。
すべての人が同じ経過をたどるわけではありませんが、「もし自分だったら….」と想像しながら読んでみてください。
同居して初めての朝は、途切れた記憶から〜
カタカタ(風の音)
トメ子さんが、窓を閉めて戻ってきました。

お疲れじゃないですか?

大丈夫です。続けましょう

いよいよ、お義母様との同居が始まりましたね。次の日の朝はどんな感じでしたか?

それが、朝、起きたら、お義母さんが『なんで私、ここにおるんや?』と、言い出して……
「ここどこ?」朝から始まる混乱
朝、カーテンを開けると、眩しい光が部屋いっぱいに広がった。
お義母さんがゆっくりと布団から起き上がる。
トメ子「お義母さん、おはようございます。昨日は、よく眠れましたか?」
義母「…….!」
少し間を置いて、突然こう言った。
義母「私、なんでここにおるんや?ゆりえ はどうした?」
トメ子(心の声)『あぁ……昨日のこと、全部忘れちゃったんだ。』
トメ子「お義母さん、ここは〇〇ですよ。
昨日、ひろみさんと3人で、ゆりえ姉さんの家から新幹線で来たの、覚えていませんか?」
お義母さんは目を見開いたまま、信じられないという表情を見せた。
義母「なんにも知らん! お前ら、わしを騙そうとしてるやろ!」
トメ子「お義母さん、昨日はゆりえ姉さんの所から、主人と孫のさとると一緒に新幹線に乗って、ここまで来たんですよ」
そう言いながら、トメ子はそっと義母の手を包みこみました。
トメ子「ゆりえ姉さんは、〇〇で息子たちと一緒に暮らしてます。」
義母は、少しうつむいて黙った。
その沈黙を待つように、トメ子はやわらかく言葉を添える。
「今日からは、ここで3人で穏やかに暮らしていきましょうね。」
義母のこわばった表情が、少し緩んだ気がした。
そのすきに、トメ子はそっと台所に立ち、朝食の支度を始める。
ちょうどそのとき、玄関の方から足音が聞こえた。
主人が、朝の散歩から帰ってきて
主人「お袋、おはよう〜」
義母「お前、何処いってたんや?」
主人「朝の散歩や。
おい、朝ごはんまだか?」
落ち着いてる義母との穏やかな昼下がり
主人が仕事に出かけたので、部屋の中は、静かになった。
しばらく窓の外を眺めていたお義母さんが、ぽつりとつぶやきます。
義母「なんか、旅館にいるみたいやね」
ここは9階なので見晴らしがよく
今日は、空も澄んでいて、淡路島がきれいに見えていました。
お義母さんのその言葉に少し安心して、私は冷蔵庫に残っていた茄子を取り出しました。
トメ子「旅行に行く前のナスビ、大丈夫かな?」
義母「大丈夫、大丈夫。野菜はね、傷んだところ取ったら食べられるよ。」
トメ子「どうやって、食べようかな?」
義母「おひたしにしたら美味しいよ」
そう言って、義母は包丁を手に取り、ゆっくりとナスを切り始めた。
トメ子「ひろみさんも、喜ぶね」
義母:(笑顔)
トメ子(心の声)『よかった。なんとか落ち着いてくれてる。これなら、なんとかやっていけるかも』
窓から差し込む光の中で、二人の時間は穏やかに流れていった。
豹変していく義母と戸惑う夕暮れ

こうして聞いていると、順調な滑り出しのように思えますね

そうなんです。この時までは

と、言いますと

それまで落ち着いていたお義母さんが、辺りが暗くなリ始めたら急に不穏になってきて
そう、言って顔を曇らせるトメ子さん。
昼間の間は、落ち着いた口調で楽しい会話を続けていた義母ですが
「辺りが暗くなるにつれて、少しずつ様子がおかしくなっていったのです。」
義母「……」
みょうにそわそわしてる義母を心配そうに見つめるトメ子が、話しかけます。
トメ子「お義母さん、疲れましたか?」
義母「今日は、帰らないとゆりえが心配してる」
そう言って、持ってきたボストンバックに着替えを入れ始める。
トメ子「お義母さん、朝も言ったけど『ゆりえ姉さんの所は引っ越すから、3週間だけお義母さんを預かってほしい。』と言われてるんですよ」
それに……
トメ子「今から、新幹線乗って6時間はかかるから、帰るのはムリです」
義母「いーや。帰れるはずや。帰って、ゆりえと話ししないと」
ものすごい力で、私が止めるのを振り切って玄関に座り込みます。
ちょうど、その時主人が帰ってきて
「カチャ」
玄関の開ける音
主人「どないしたんや?」
トメ子「お義母さんが帰るって言ってきかないの」
主人「お袋、何言ってるんや。どっこも帰る所ないで!」
言い合いは、玄関の外にも響きます。
隣の新垣さんが
「どうしたんですか?大丈夫ですか?」
義母は涙目になりながら
義母「駅まで送ってくれたら、一人で帰れるから….」
結局、持ってきたボストンバックを抱えて主人が義母を駅まで連れていくことにしました。
しばらくして、二人は戻ってきます。
近所を一周回って戻ってきたみたい。
だけど、疲れて帰ってきた主人は、いつにも増して不機嫌そうで、隣にいる義母は、少し怖がっているように見えます。
怒っても伝わらない【認知症介護のコミュニケーション】

お義母様の記憶や感情が目まぐるしく、変わっていく様子がよく伝わってきます。
このあと、どうされたんですか?

主人は、普段から声が大きいんです。
普通に、本人は話してるつもりでも、お義母さんにとっては、怒鳴られてるように聞こえたみたいで……
こちら『みんなの介護』では、認知症の方へ話しかける時の注意点が書かれていますので参考にしてください。
認知症の方へ話しかける時には
- いきなり後ろから声をかけない
- 相手の目線まで顔を近づけて、穏やかに話す
- 一度にたくさん話さず、短く・ゆっくり伝える
- 否定せず、「そうなんですね」「そう思うんですね」と受け止める
- 相手が言葉を探しているときは、焦らせず待つ
認知症の義母の不可解な行動
玄関のドアが開いて、主人とお義母さんが帰ってきました。
どうやら、近所を一周してきたらしい。
義母「……トメちゃん、今日は遅くなったから明日帰るね」
トメ子「そうした方がいいと思いますよ」
その瞬間、主人が語気を強めた。
主人「なんや!さっきは『帰る』って言ってたやないか!!」
せっかく、落ち着きたかけた空気が一気に変わる。
義母「わかった。警察でもなんでも連れていったらええわ!
殴りたかったら、殴れ!」
怒りと混乱が交じった声。
私も疲れていて、つい売り言葉に買い言葉で返してしまった。
トメ子「殴るわけないでしょう。
そんなことしたら、私が捕まりますよ。」
言葉をぶつけ合うようなやりとりが、しばらく続いた。
その声を断ち切るように、主人が布団を引き、パチンと電気を消した。
主人「もう、ええから早く寝ろ!
トメ子も、ええから」
ここ数日の不満が、心の中で重くのしかかっていました。
少し距離を置こうと思い、同じマンション内の実家に身を寄せました。
トメ子「ただいま。少し、こっちで寝かせてもらってもいい?」
母「いいよ。」
母には、あらかじめ事情を知らせておきました。
しばらく、テレビをつけたまま座っていると、急に眠気が押し寄せてきて、うつらうつらと意識が遠のいていく——。
……どれくらい経ったのだろう。
主人「おい。」
主人「おい!」
はっと目が覚めると、目の前に主人が立っていた。
主人「気がついたら……お袋がいなくなってて。」
怒っているのか、戸惑っているのか、主人の表情には焦りがにじんでいた。
トメ子「とりあえず、近所を探しましょう」
マンションの1階に降りると、義母が端から順にインターホーンを押して回っていた。

この時、お義母様は、誰かを探していたんですか?

ええ。多分、ゆりえ姉さんを探していたんだと思います。

この時は、というと……それ以降も、同じようなことが?

はい。
何かあるたびに、決まって同じお宅のインターフォンを押していました。
「きっと、その家を“ゆりえ姉さんの家”だと思い込んでいたんだと思います。
そのお宅にしてみたら、気味が悪かったでしょうね……。」
「つづく介護の日々へ」夜の記憶を越えて

今回はここまで——。
この日の夜は、トメ子さんが、お義母様の手を取って家に帰り、不安で落ち着かない様子だったお義母様もやがて静かに眠りにつかれたそうです。
記憶があちらこちらに飛び混乱されるお義母様に対して、当時はまだ「認知症」への知識が十分でなかったため、対応にとても苦労されたといいます。
ご主人も戸惑いながらも、お義母様を想い、そしてトメ子さんを理解しようと努めてくれました。
その後も、お義母様の様子は日によって良かったり悪かったりを繰り返しましたが、トメ子さんは毎朝、同じ話を繰り返し伝え続けたといいます。
次回は、あれほど拒まれていた病院への受診に至った経緯を、トメ子さんの言葉でお届けします。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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